こんにちは。さらしんです。
サッカーをやっていたり、観戦したりしているとアドバンテージという単語をよく聞くと思います。
そのときに疑問に思ったことはないでしょうか?
- アドバンテージってそもそもどういうことだろう?
- アドバンテージってどういうときに適用されるのだろう?
- 警告や退場になるような反則がアドバンテージになった場合どうなるんだろう?
本記事では、これらの疑問を解決できるようにアドバンテージについて説明しています。
実際にサッカーをしている選手や監督達も詳細を理解している人は少ないのではないかと思っています。
ましてやサッカー観戦をしている人にはもっと分かりにくいものになっているかなと思います。
ただ、アドバンテージを理解すれば、サッカーへの理解が深まります。
選手であれば、相手の足が止まっている間に優位な攻撃ができるかもしれません。
また、観戦する方はサッカー観戦の楽しみ方も広がると思います。
少しマニアックな内容になってしまっていますが、良ければ最後までお付き合いください。
サッカーのアドバンテージとは
まず、競技規則の文言は次のようになっています。
アドバンテージとは
反則があり、反則をしていないチームがアドバンテージによって利益を受けそうなときはプレーを継続させる。
しかし、予期したアドバンテージがそのとき、または、数秒以内に実現しなかった場合、その反則を罰する。
競技規則より
簡単に言い換えると、攻撃側がファウルがされたとしても、チャンスになりそうな時はファウルを取らずにプレーを続けさせましょう。
でも、チャンスが実現しなかった場合はファウルを取ります。
ということです。
基本的な理解はこれで問題ないと思います。
ちなみに、アドバンテージを適用することを、「流す」と言ったりします。
アドバンテージを適用したけど、パスがつながらなかったりして元の反則をとることを「ロールバック」と言います。
アドバンテージの時の主審のシグナル
アドバンテージを適用するかどうかは、主審が判断をします。
アドバンテージを適用した際には、主審はシグナルと声掛けを行っています。
アドバンテージの時のシグナルはこちらです。
アドバンテージのシグナルは、片手バージョンと両手バージョンの2種類あります。
このシグナルをしながら、「プレーオン」、「アドバンテージ」と言うことになっています。
反則かなと思ったときに、笛が鳴らない場合は主審のシグナルを確認してみましょう。
このシグナルが出ていれば、ファウルがあったけど、アドバンテージが適用されたということになります。
このシグナルが出ていない場合は、主審はノーファウルと判定しているということになります。
アドバンテージ適用のポイント
少しマニアックな内容になってしまいますが、アドバンテージ適用のポイントについて、競技規則に記載がありますので紹介します。
明らかな得点の機会を除き、著しく不正なプレー、乱暴な行為または2つ目の警告となる反則を含む状況で、アドバンテージを適用すべきではない。
主審は次にボールがアウトオブプレーになったとき競技者に退場を命じなければならないが、その競技者がボールをプレーする、あるいは競技者に挑む、または、妨害する場合、主審はプレーを停止し、その競技者を退場させ、間接フリーキックでプレーを再開する。ただし、その競技者がより思い反則を犯した場合を除く。
競技規則より
主審は、反則が起きたときにアドバンテージを適用することができるが、アドバンテージを適用するのかプレーを停止するのかを判断するうえで、次の状況を考慮する。
・反則の重大さ。
(反則が退場に値する場合、反則直後に得点の機会がない限り、主審はプレーを停止し、競技者を退場させなければならない)
・反則が犯された場所。
(相手競技者のゴールに近ければ近いほど、アドバンテージはより効果的になる)
・すばやく、また大きなチャンスとなる攻撃ができる機会にあるか。
・試合の状況(雰囲気)
競技規則(P.204)より
アドバンテージを理解する上で、特にポイントとなる点は以下の2点だと思います。
退場になるときはアドバンテージを適用されない
退場に値するような事象があったときには、基本的にはアドバンテージが適用されません。
足裏での危険なタックルや、乱暴な行為、決定的な得点の機会の阻止、2枚目の警告などが該当します。
ですので、そういった反則が起きた場合は、主審はプレーを停止します。
次のプレーでゴールにほぼ確実にボールが入るような状況では、アドバンテージを適用しても良いとありますが、滅多にないことだと思います。
試合の状況(雰囲気)
アドバンテージの適用は、試合の状況や雰囲気で使い分けられています。
必ずしも大きなチャンスにつながるときだけに適用される訳ではありません。
(自分が主審のときはこの使い分けがかなり難しいです)
結構あるのが、ディフェンスラインや中盤の深い位置で反則があった場合です。
大きなチャンスにはつながらない位置での反則でも、ちょっとした反則であればアドバンテージを適用するケースがあります。
試合のレベルや選手がどう感じているかなどを踏まえての判断になるかと思います。
ファウルを受けた側の選手から「止めないで」と言われることもあります。
一方で、ファウルが連続して起きている場合や、試合が荒れそうな場合は、場を落ち着かせたり、該当の選手に注意をするなどの目的でプレーを止める場合もあります。
アドバンテージとカードの適用
ここもマニアックな内容となります。
警告や退場となるべき反則に対して主審がアドバンテージを適用したとき、この警告や退場処理は次にボールがアウトオブプレーになったときに行わなければならない。しかしながら、反則が相手チームの決定的得点の機会を阻止するものであった場合、競技者は反スポーツ的行為で警告され、反則が大きなチャンスとなる攻撃を妨害、または阻止したものであった場合は警告されない。
競技規則より
アドバンテージが適用された後にカードがでる場合と出ない場合があります。
その違いについて説明します。
アドバンテージ適用+カードなし
アドバンテージを適用して、プレーが切れたときにカードが出ない場合は2つのケースがあります。
- そもそも警告にも退場にも該当しないファウルだった
- 大きなチャンスを妨害、または阻止するためのファウル(SPA)だった
警告や退場に該当しないファウルであれば、カードが出ないのは分かりやすいです。
一方、大きなチャンスを妨害、または阻止するためのファウル(SPA)だった場合
SPA:大きなチャンスを妨害、または阻止するためのファウル(Stopping a Promising Attackの略)
その場で笛を吹けば、大きなチャンスを阻止したということで警告の対象になります。
しかし、アドバンテージを適用したことで、大きなチャンスは継続したという理解になります。
よって、ファウルをした選手にカードは提示されません。
アドバンテージ適用+警告
アドバンテージが適用されて、プレーが切れたときに警告が出る場合についてです。
- ラフプレーによる反則だった
- 決定的な得点の機会の阻止だった
ラフプレー+アドバンテージ適用、後で警告のパターンは結構あります。
ラフプレーとは、直接フリーキックとなる反則を無謀に行うことです。
無謀とは、相手競技者が危険にさらされていることを無視して、または結果的に危険となるプレーを行うこと
後方からの危険なチャージや、遅れ気味のスライディングタックルなどが該当します。
ラフプレーによる反則の場合は、アドバンテージが適用されたとしても、プレーが切れたあとに警告が与えられます。
決定的な得点の機会の阻止だったときは、基本的にはアドバンテージは適用すべきではないとされていますので、ほとんどない事象と思われます。
アドバンテージを適用+退場
アドバンテージが適用されて、退場となる場合についてです。
- 著しく不正なプレー、乱暴な行為だった
この場合は、基本的にはアドバンテージを適用すべきではないとされています。
なので、ほぼ発生しないケースではあります。
実際の試合でよくあるケース
実際の試合でよくあるケースとしては以下の2つのパターンです。
これを押さえておけば、警告の有無の理由が理解してもらえると思います。
- 大きなチャンスの阻止(SPA)→アドバンテージを適用→ノーカード
- ラフプレー→アドバンテージを適用→警告
アドバンテージでのカードの適用に関しては、Jリーグジャッジリプレイでも触れられています。
参考になりますので、一度ご覧ください。
アドバンテージに関する説明は以上です。
アドバンテージはサッカーの魅力の一つ
これは、筆者の個人的な意見になりますが、アドバンテージはサッカーの魅力の一つだと思います。
ファウルを受けながらもプレーを続け、アドバンテージが適用され、チャンスが広がり、ゴールにるながる。
この流れが本当にたまりません。
お手本のような動画がありましたのでおいておきます。
アドバンテージからのゴールインで白飯3杯いけます(笑)。
アドバンテージという競技規則を知らなければ、ゴールが入ったということでしかないかもしれません。
しかし、そこにはファウルを受けながらも頑張った選手がいて、その人の頑張りを他の選手が引き継いでゴールに結びついている。
また、審判員がそれをアドバンテージの適用という形でサポートしている。
これを知っていると、見ている方としてもゴールの喜びの気持ちが倍増するんです。
この記事をきっかけに、アドバンテージの魅力に気付く方が増えると嬉しいです。
アドバンテージでは審判員の力量が試される
ここからは少し余談になります。
筆者は、2級審判員として活動をしていますが、アドバンテージの適用についてはいつも反省ばかりです。
チャンスになりそうな場面で笛を吹いてしまったり、予測と違う展開になって攻撃側が不利な状況になったりすることもあります。
それによって、選手やベンチから「なんで流さないんだよ!!(怒)」、「流せよ!!(怒)」と言われたり。
逆に「なんで止めないんだよ!!(怒)」、「止めろよ!!(怒)」と言われたりしています。
アドバンテージの適用をミスすると基本選手やベンチにひどく怒られます
うまくアドバンテージを行うためには、試合の状況の把握や、試合展開の予測やサッカーセンスが必要です。
外から見ていると結構分かり易いんですけど、ピッチに立ってやると難易度が一気にあがります。
それでも、Jのトップレフェリー達はこういった部分でも高い能力を持っておられて、的確にアドバンテージを適用されているので、本当にすごいと思います。
(たまにミスもありますけどね)
最後に
今回はサッカーのアドバンテージについて書きました。
細かい部分まで書いていると、結構なボリュームになってしまいました。
アドバンテージに関しては、基本的には以下の理解でOKと思います。
攻撃側がファウルされたとしても、チャンスになりそうな時はファウルを取らずにプレーを続けさせましょう。でもチャンスが実現しなかった場合はファウル取るよ。
アドバンテージ適用した後にアウトオブプレーになったときのカードの有無については、以下の表にまとめました。
項目 | ノーカード | 警告 | 退場 |
ファウルの内容 | ・普通のファウル ・大きなチャンスの阻止(SPA) | ・ラフプレー ・決定的な得点の機会の阻止(DOGSO) | ・著しく不正なプレー ・乱暴な行為 |
アドバンテージというのは、結構奥の深い項目です。
それもあってなかなか理解されにくいものになっているかなと思います。
- 試合中にアドバンテージの適用があったのかどうか
- プレーが切れた後にカードが出るのかどうか
こんなことを気にして見ると、ファウルの有無やファウルの内容などが推測できるようになります。
サッカーをするときや観戦するときに是非こういったところまで注目してみると、サッカーに対する理解がより深まるのではないかと思います。
この記事でアドバンテージに関して、詳しくなれたと思ってくれた人がいれば嬉しいです。
以上最後までありがとうございました。
さらしん様。栃木県の奥澤です。20歳から審判を始めて、今年で55年目のシーズンです。第1種・社会人を中心に活動していますが、公式戦だけでも3.150試合を務めました。現在は指導の方がメインですが。さて、さらしん様が作成した労作「アドバンテージ」を拝見しました。分かり易く、良く理解出来ました。特に、アドバンテージを適用した時に、以前は全て警告する事が出来ました。しかし現在では、ラフプレーは警告出来ますが、反スポーツ的行為にはカードは出せません。その事は、競技規則(ルールブック)には明記されておりません。*昔、私の若かった頃のアドバンテージはロールバックはありませんでした。失敗すると「下手くそ。へぼ審判」と怒鳴られました。アドバンテージで審判の優劣が決まりました。ロールバックがあっても、今もそうでしょうが。ありがとうございました。
奥澤さん。
コメントいただきありがとうございます。
55年目のシーズン凄すぎます。
アドバンテージの適用は難しいですよね。
選手やベンチのフラストレーションをためないようなレフェリングを頑張っていきたいです。